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東京高等裁判所 昭和31年(う)1329号 判決

控訴人 被告人 小林徳蔵

弁護人 柴崎四郎

検察官 小西太郎

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人柴崎四郎提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、これをここに引用する。

よつて次のとおり考察をする。

証拠ないし記録によれば、本件所為は、その当初性交の如何なるものであるかを知らない未だ満十五年にも満たない少女に対し、同女が中学の卒業期を控えて、就職に焦心して居た折柄、これに乗じて言葉巧みに就職斡旋を名に、同女を連れ出して姦淫したものであり、なるほど、最初、就職のための身体検査に名を藉り、同女の陰部に手指を挿入し、また陰茎を挿入しかかつた事実もあつて、その際同女において性交の何たるかを解するに至つた節も窺われないわけではないが、それかといつて、ただそれだけの事由をもつて、又人の近ずく気配に場所を他に転じて二度目に性交を遂げた事実をもつて直ちに強姦の事実がないとすることはできない。蓋し、被告人が、その間同女に対し特段に有形力の行使による暴行や畏怖の念を生ぜしむべき言辞を弄した脅迫事実の必ずしも見るべきものがないとするも、前述の如く就職に焦心しているうら若い同女の始めての経験として、その性交が、原審認定の如く、被告人の右手指挿入等に起因した驚愕の結果、同女において前後の辨を失した抗拒不能の精神状態になつたのに乗じて行われたものであることもこれを認め得るものがあるからである。即ち、姦淫において、敢えて有形力の行使による暴行や畏怖せしむる言辞を弄するの手段に出でた事実がないとしても、欺罔等の巧妙な手段によつて機会を作り、相手方の性的無知ないしは性的所作事に起因する驚愕による前後の辨を失した抗拒不能に乗じて姦淫を遂げた事実あるにおいては、強姦の罪の成立あるを免がれない。従つて、本件被害者が、被告人の右姦淫によつて処女膜裂傷の傷害を負うに至つたことの証拠上明らかな本件において、原審が証拠により右と同趣旨の事実及びこれによる右傷害の事実を認定して、被告人を強姦致傷の罪に問うたことは正当である。所論において、被害者が、右の如き驚愕による抗拒不能な精神状態になつたとの点及び被告人がこれを認識していたとの点を否認して、原判決を非難しているが、被害者の年令や事の起りの動機その他証拠に見られる事の具体的経過に照らし、同女の原審における右精神状態に関する同趣旨の証言は決して看過するを得ないところであるばかりでなく、被告人において右精神状態についての認識があつて本件姦淫の所為に出でた事実もこれを否定することはできない。所論は、結局、原審が条理経験の法則に従がいその専ら有する判断権に基き証拠の価値ないし事実の認定について自由に判断したところを非難するに帰し採用し難い。論旨は理由がない。

よつて本件控訴の趣意は、その理由がないから、刑事訴訟法第三百九十六条に則り主文のとおり判決をする。

(裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 遠藤吉彦)

柴崎弁護人の控訴趣意

一、原判決は、「被告人はこの機会に同女を姦淫しようと決意し、……、幸子はこの時に至つて初めて被告人の意図を察知して驚愕したが、既にかかる事態にまでなつている以上、逃げようとすれば直ちに被告人に捕えられて或は打擲される等の暴行を加えられるかも知れないと考えて恐怖し、右驚愕と恐怖のため全く心の平静を失い、自由なる意思のもとに行動する精神的余裕を喪失してしまつた。被告人は同女が右の如き精神状態のため抗拒できない状態に陥つているのを知りながら、これに乗じて同女の上に馬乗りとなり姦淫しようとしたが、その際前記校庭内に人の足音がしたのでこれを中止し、その場から同校東第一昇降口附近に同女を連行して更に同所においてなお前記抗拒不能の状態にある同女を仰向けに寝かせた上、その抗拒不能に乗じて姦淫を遂げた」と、事実を認定し、その証拠として原審証人幸子に対する尋問調書及び、幸子の検察官に対する供述調書等を挙示している。

二、しかし、右幸子の供述は、その警察における最初の供述からして、殊更らに、事実を隠蔽したり或は、事実を誇張している点が多く見られるのであつて、その侭には信用し難いものなのである。(1) 幸子は、本件の姦淫をされたという場所については、警察における取調の当初から、さらに原審において証人として尋問を受けるまで、終始一貫して、川越市立第三中学校庭内の足洗場附近であつたと供述して来ていたのであるが(幸子の警察における供述「記録第三二頁以下」、警察における実況見分調書記載「記録第一四頁」、幸子の検察官に対する供述「記録第四六頁裏以下」及び原審における証人幸子の供述「記録第二二五頁」)、原審においては、裁判長から追及された結果、初めて、その姦淫された場所は、初めは右足洗場附近であつたが、人の足音がしたので、途中で同校東第一昇降口附近に場所を換えたことを明らかにしたのである(記録第二二五頁裏以下)。(2) また、幸子は、警察における実況見分の際には、被告人から、其処へ寝なさいと脅迫され、もし寝ない時は暴力を加えようとするような態度を示して畏怖させられたと、述べて居り(記録第一七頁)、さらに、検察官の取調に当つては、「男は私の身体の上に腹ばいになつて重なつたのであります。その男の両手は私の両肘附近を押えつけておりましたので、私ははずかしいと思つても逃げ出す訳にもいかなくなつてしまいました」と述べているのであるが、(記録第四七頁以下)、しかし、この点についても、幸子は、原審においては、「被告人からは、別に脅かしたり乱暴はされていないし、また、乱暴されたりするような様子も見受けられなかつた」と、ハツキリ証言しているのである(記録第二二九頁及び第二三一頁裏)。(3) なお、また、幸子は、警察における取調においては、「私は始めてこんな事をされたので何も知りませんでしたが、この事があつてから始めて母から、こうゆう事をすると子供が生れる云々と話されたので、何んの為にこの男の人は私の身体に乗つたかが解りました」と述べているのであるが(記録第三四頁裏)、しかし、原審においては、「私はこれまで男からこんなことをされたことがなかつたので、性交とはどんなことをするのか分りませんでした、併し最後の昇降口の処へ来て寝かされた時には性交とは男の陰茎を女の陰部の中へ入れることだと云うことを判つていました」と述べているのであつて、それが性交であることを知つていたことは、同女の年令から云つても当然のことであると思うのであるが、幸子は、この点についても、いつわりを云つて来ているのである。

三、そのように、幸子は、警察や検察庁においては、事実をいつわつた虚偽の供述をして来ているのであるが、同女が、そのようないつわりの供述をして来たのは、これは、恐らく、同女が、自己の不始末、殊に、見知らぬ男に、場所を換えてまで体を許したことを、恥じらつて、母や、取調官に対し、その侭に云うを憚かつたが為ではないかと考える。(1) 此の事件が、明るみに出るようになつたのは、幸子の母秀子の告訴に基くものなのであつて(記録第五四頁告訴調書)、幸子本人としては、むしろ、このことが、そうして表沙汰になることは、不本意であつたように考えられるのである。それは、同女が、被告人に送られて家に帰つて来ても(同女の母は、送つて来た被告人に礼を述べているのである「記録第六〇頁」)、体を許したことは、容易に告白しなかつたその態度から、よく察せられるところであると考える。そうして、幸子は、母から問いただされて、初めて、男から変ないたずらをされたということを話したようであるが、その告白をすると、母からは、どうして逃げて帰らなかつたのかと、たしなめられたりして(原審における証人秀子の供述「記録第二六二頁」)、翌日母に連れられて警察に行つたのであつたから、幸子としては、その母の居る前で、取調官に対し、初めて会つた見知らぬ男から、場所を換えたりして関係させられたというようなことは、云い難いことであつたであろうし、また、逃げるようなこともしないで、易々と関係をされたということも、告訴をして出た母の手前、有りの侭を供述できなかつたと思うのである。(2) そのため、幸子は、逃げもしないで、体を許してしまつた言いわけを、警察では、前記のように、其処に寝なさいといつて脅されたといい、また「私はその男の人に身体検査をすると云うので、ズボン迄脱いたのですが、私の身体に重なつたので、おかしい事をすると思つたので起きて逃げようとしましたが、上から押えられていて逃げられませんでした」と、供述し(警察における幸子の供述「記録第三六頁」)、さらに検察官に対しては、男は私の身体の上に腹ばいになつて、両手で私の両肘附近を押えつけていたので、はずかしいと思つても逃げ出せなかつたと、いうように述べて、自己弁護をしているのであるが、それが、何れも作為の供述であることは、それ等の供述を、原審における証人としての供述と対比すれば、明瞭なことであると考える。

四、以上のように、幸子は、警察の取調以来、その時々に、供述を変えて来ているのであつて、その何れの供述に信を持つて良いか、甚だ取捨に迷うのであるが、しかし、そのような供述の中でも、その取調の形式から考えて、原審における証人としての供述が、最も信を措けるのではないかと考える。

五、幸子は、原審においては、証人として、「先程申上げたとおり最初藤棚の近くにある流場のコンクリートの上に寝かされてから被告人は私の陰部の中へ指を入れていたずらをしている時人が通るように下駄の音がしたので被告人は私にズボンを穿けと云つて自分も脱いでいたズボンを穿いてから被告人は近くに置いていたオートバイを取つて来て″こつちへ来なさい″と云つて私の只今申上げた第一昇降口の処へ連れて行つたのです(尋問調書第一六頁記録第二二六頁)。最初藤棚の処でも男の陰茎が少し許り入りかかつたのですが、その時人の来る音がしたので止めて場所を替えたのです。身体検査をすると云つて最初上衣のボタンをはずして胸のあたりを調べていた時には私もまだ本当に検査をするものと思つていましたが、ズボンを脱がせて陰部え指を入れて悪戯を初めてから私は身体検査をすると云うことは嘘であり又就職の世話をすると云つたのも嘘だと思いました(尋問調書第二六項六行目以下記録第二三〇頁)。人の来る音がしたので藤棚の処から場所を替えたのですが、その時被告人は別に人が来たから場所を替えようとは云わず唯″あつちへ行こう″と云つて立ち上つて被告人は藤棚の方へオートバイを取りに行きました。私はその間立ち上つてズボンを穿いていました。″あつちへ行こう″と云つた言葉も別に脅かすような云い方ではなく普通でした。藤棚の処から場所を替えて昇降口の方へ行く際被告人はオートバイを転して行き私は被告人と竝んで一緒に歩いて行きました(尋問調書第二八項記録第二三〇頁裏)。第一昇降口の水飲場の処へ来ますと被告人はコンクリートの上へ寝ろと云うから私が水道の方を枕にして寝ると被告人が私の穿いていたズボンと股引を脱がせたのです。左足の方のズボンと股引を全部脱がして了つたから私のお尻はコンクリートに触つていました。被告人は私のズボンを脱がすと両足を拡げてその間に這入つて来てズボンを脱いで私の上へ馬乗りになつたのです。そして陰茎を出して私の陰部の中へ入れたのです。男の物を入れられた時私が″痛い″と云いましたら″痛いのはあたりまえだ就職の者は皆こうするのだ″と云つたのはこの時のことです。被告人はお腹の処で五分間程腰を動かしておりましたが、その時又下駄の音が給食室の奥の方に聞えたので被告人は立ち上つてズボンを穿きかけながら私にもズボンを穿けと云つたので私も立ち上つてズボンを穿くと被告人は急いで最初に這入つた裏門から通路へ出て私の家の近くまで送つて帰つたのです(尋問調書第一八項第一九項記録第二二七頁以下)。」と、供述して居るのであつて、その供述からすると、幸子は、近くに人が来たのを知つても、別に騒ぎ出すでもなく、被告人に促がされると、場所を換えて其処でまた関係されるというように、唯々諾諾と被告人の要求に応じていたことが容易に推察されるのである。

六、しかし、また、幸子は、原審においては、証人として、「私は被告人が下の方を検査すると云つてズボンを脱がせた時初めて身体検査ではなく陰部を悪戯するのではないかと感付きました。それで私はその場から逃げようと思つたのですが逃げても又捕まつて了い却つてひどいことをされては大変だと思つたので仕方なくそのままにしていました。男の陰茎を入れられた時私は男と女の性交をやられたと云うことは知つていました。それで私は大変なことをやられたと思つたから″止めて呉れ″と云つて声を立てようと思いましたが恐しさで夢中になり声も立てられませんでした。男は別に脅したり″逃げても駄目だ″等と云いませんでしたが、私は逃げても直ぐ捕まつて了うと思つたから逃げようとしませんでした(尋問調書第五項第七項記録第二二三頁以下)。最後にやられた昇降口は裏門の直ぐ近くであり裏門の前は道路で人家が竝んでいることは知つていましたが、逃げ出しても又直ぐ追いかけられて捕つて了うと思つたので夢中になり逃げられませんでした。被告人は別に脅したり乱暴はしませんでしたが逃げても駄目だと思いました。昇降口の処で寝ろと云われた時私は被告人が何をしようとするのか分つていましたが、逃げたり抵抗したりすると、却つて乱暴でもされはしないかと思つたので、別に抵抗しませんでした(尋問調書第二三項記録第二二九頁)。別に被告人から乱暴されたりするような様子は見受けませんでしたが、私としては逃げても直ぐ追いかけられて捕つて了い却つてひどいことをされて怪我でもしたら大変だと思つたので、逃げる気になりませんでした(尋問調書第二九項記録第二三一頁裏)。」と、供述しているのであるが、この幸子の供述は、その侭には信用できないものであると考える。

七、幸子は、「止めて呉れと云つて声を立てようと思つたが恐ろしさで夢中になり声も立てられなかつた」といつてはいても、陰茎を入れられて痛みを感ずると、即座に痛いと声を出しているのであるし、また、被告人から、これまでに男からいたずらされたことがあるのかと尋ねられると「そんなことは一度もない」と、答えて居るのであるから(原審尋問調書第二五項記録第二二九頁裏)、如何に口では、恐ろしさに声も立てられないで夢中になつていたといつていても、それは、ただ、前記のように、同女が、逃げることもしないで関係されたことを、己むを得なかつたこととして、うなずかせるための作為の供述としかうけ取れないのである。

八、なお、また、幸子は、「逃げても直ぐ捕つて却つてひどい目に逢わされはしないかと思つたので、夢中になり逃げられなかつた」と、いつていても、事は、見知らぬ男から処女を犯されることなのである。如何に同女が、年はまだ若いと云つても、既に新制中学卒業期に在つて、一応の教養を身につけている女であれば、たとえ、多少のひどい目に逢わされようとも、逃げる機会は、いくらでもあつたのであるから、其の場を逃げ出すなり、また、逃げないとしても、近くまで人が来たことを知つているのであるから、其処で騒ぎ立てる位のことは、身を守ろうとする女の当然にする行動ではないかと考える。いわんや、被告人は、その際、別に乱暴をするような様子もしていなかつたというのであるから、其処で、女が、恐ろしさに抵抗もできない程夢中になつてしまつたというのは、余りにも其の場の状況や事情に合わない供述ではないかと考える。

九、幸子が、場所を換えて関係された処は、原審における検証調書記載で明らかであるように、川越第三小学校の裏門を、僅か十米足らず入つた場所なのであり、裏門を出れば、道路を距てて人家が建ち竝んで居るのであつて、時刻も、まだ午後五時半頃のことなのであつたから、裏門を出た道路には、人通りもあつたであろうし、その道路を距てた人家も、皆雨戸は開けていたことであろうから、そのような場所で、男も別に手荒な言動をしていないのに声も立てられないで、夢中になつていたということは、客観の状況、事情から考えれば、到底納得のできることではないと考える。

一〇、しかるに、原判決は、その幸子の供述をその侭採つて、同女は、驚愕と恐怖のため全く心の平静を失い、自由なる意思のもとに行動する精神的余裕を喪失してしまつたと認定しているのであるが、その認定は、前記客観の状況や事情に照して、誤りであることが明らかであると考える。

一一、仮りに、また、幸子が、真実、その供述するように、逃げても直ぐ捕つて、却つてひどい目に逢わされはしまいかと思つて夢中になり逃げられなかつたと、いうのであつたとしても、被告人からは、別に乱暴されたりするような様子は見受けなかつたというのであるから(原審における証人幸子の供述第二九項記録第二三一頁裏)、それは、ただ、同女が、被害妄想的に、自身だけで、そう考えていたに過ぎないことなのであつて、被告人の所為とは、何等のかかわり合いもないことなのである。そうであれば、被告人としても、同女が、そのような精神状態になつて抗拒できないでいるというような、一般の場合として有り得ない同女の心裡は、とうてい知り得べくもないことなのであつて、また、同女が、そのような精神状態になつていることを知つていたという証拠も、被告人の供述や、行動から認められないところなのであるから、原審が、被告人は、同女が抗拒できない状態に陥つているのを知りながら、これに乗じて同女を姦淫したと判断していることは、証拠に基かない推測判断であると考えざるを得ないと思うのである。

一二、幸子が、その現在男にされていることの意味を知つて居ながら、そういうことをされている間、逃げ出そうともせず、騒ぎもせず、また、泣くようなこともしないで、被告人の為すが侭に身を委していたということは、一応解せないことではあると考える。これが、もし、前に男と関係があるかして、男女関係に好奇心でも持つている女であれば、或は、そのようなこともあるかと考えられもするのであるが、全く前に男の経験のない女であつたなら、恐らくは、突然のことで、どんなことになるか判らないのであるから、その心配や恐怖のために、本能的にも、騒ぎ立てたり、泣きさけぶなりすると思うのである。ところが、幸子は、被告人に求められる侭に、別に嫌がつた様子も見せないで、校庭の地面に素直に仰向けに寝たり、また、人の近付いた足音を聞きながら、被告人に促がされる侭に、場所を換えて、其処で易々と関係を許しているのである。そのような女の態度や、若い女でありながら、易々と関係が出来たことから考えると、幸子は、年は若いが、被告人が述べているように(原審第二回公判調書第三八項記録第二〇一頁)、前に男の経験があつたのではないかと考えられるのである。或は、また、同女は、新制中学卒業を間近に控えていて、既に就職先の決つた友達も居り、それで就職のことは相当に心配していたように思われるのであるから(原審における証人秀子の供述記録第二六〇頁裏)、同女も、何んとか職を世話して貰いたいという一心で、軽薄にも、男の意を向えようとして、男の求めるが侭に、体を許してしまつたものではないかとも考えられるのである。それは、同女が、家に帰つてから、その態度を不審に思つた母から問いただされると、「もうあの人には就職は頼まない」ということを、口をついで云つていることから考えても、同女は、そうされた後でも、なお、就職のことはどうしようかと、思い迷つていた様子が見られるからである。

一三、原判決は、以上に述べたように、罪とならない被告人の所為に対して、証拠の判断を誤り、強姦致傷の事実を認定しているのであつて、その事実の誤認は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、破棄せらるべきものであると信ずる。

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